デザインアワード2023 審査会
はじめてのWEB応募となった2023年度、
全国から200件の作品が届きました。
暮らしの"夢"を"現実"にする
「実現力」を発揮した
数々の実例について、その魅力を
審査員の皆さんに伺いました。
生活や家族、自分たちの
変化にあわせて大胆に
単に設備の取り替えではなく、ペットとの共生や介護のためなど生活や家族構成の変化にともなったリフォームが特に多く見られました。リフォームの内容も多様で、例えば介護の場合、ひと昔前は段差をなくしたり手すりをつけたりが一般的でしたが、今はご家族の暮らし方に合わせて、間取りそのものを大胆に変えたものもありました。「やりたいことは何でも実現できる」というリフォームの自由度が浸透してきたといえるかもしれません。
空き家となった実家を帰省時の拠点や趣味の工房に改装するような、使っていない建物の有効活用した事例もありました。今後、少子高齢化で建物はさらに余ってくると考えられます。一世帯で2軒3軒と所有するのがスタンダードになるのでないかという住宅の在り方もみえてきました。
ゴージャスからナチュラルへ。
空間全体の雰囲気を優先
インテリアで際立ったのは、グレージュやベージュを基調にしたグレイッシュなコーディネートです。昨年は空間のアクセントとしてネイビーのキッチンが人気でしたが、今年はむしろ目立つ色を設備に選ぶのではなく、空間をつくるひとつの材料として全体の雰囲気に馴染むような色を選定する傾向が強いようです。
明るい木目を北欧調にまとめたり、チーク材のような濃い木目を重厚感あるダークな色調で組合わせたり、木目の活かし方も多彩でした。石張りなどのゴージャスなものよりは、よりナチュラルで全体になじむようなインテリアが好まれています。
制限があるからこそ生まれた
それぞれの暮らしやすさの工夫
今回は、小規模の応募作品のリフォーム内容がバラエティに富んでいたことです。制限や条件をうまく活用して工夫した事例が多く見られました。廊下をなくし限られた面積を有効活用したり、可変性のある間仕切りや引き戸を活用して空間を区切ったり、このような工夫は実際の平米数以上の快適性や暮らしやすさを生み出すことも可能でしょう。
部分リフォームでは、玄関リフォームも増えています。“過ごす”場ではありませんが、玄関には靴や傘はじめものが多く、宅配便の荷物が届いたときの受け渡し、また家族が多いと出入りが渋滞するなど使用頻度も高く、狭いとストレスになりやすい空間です。暮らしの質への影響は大きい部位なだけに工夫も多彩でした。今年度から新設された特別賞は「食を楽しむキッチン空間賞」「快適バス&洗面空間賞」「心地よいインテリア内装空間賞」「収納上手暮らし賞」「家族や家計・環境に優しい住宅性能向上賞」の5部門。工事規模が少額の作品も入賞。部分リフォームへの関心の高まりからも、今あるものを大切に丁寧に使おうとする姿勢が色濃く見えてきます。建築資材の高騰や環境配慮への意識が高まる中、このような傾向はより強くなりそうです。
審査員コメント
今あるものを大切に使い続ける
価値観の多様性と自由な発想、環境配慮への関心が高まるリフォーム市場。応募作品からは「今あるものをいかに有効活用し、自分たちの暮らしにあった住まいをつくるか」そんな想いが見えてきました。
建築家
(株)コンパス建築工房
代表取締役
西濵 浩次さん
暮らしに求める豊かさの
価値観が変わってきた
ものがあふれる時代にあって、家に対する価値観に大きな変化が起こりつつあると気付きました。贅沢な素材を使った豪華なインテリアよりも、自分たちで自由に変えられる空間や窓から見える景色、子どもが安心して遊べる場などに豊かさを感じておられる方が増えたことが作品から感じられました。
「relife+
(リライフプラス)」
編集長
君島 喜美子さん
家族構成の変化に合わせ
心機一転できるリフォーム
子どもの独立がきっかけのリフォームに注目しました。子どもの巣立は少し寂しい気もすれど、空いた部屋を趣味の部屋にできるとか、夫婦それぞれの寝室ができるとか前向きにとらえれば、老後の人生も楽しくなる。間取りを変えれば気分もガラッと変えられるんだと、作品から学びました。
インテリアデザイナー
interior design STRASSE
代表
柳生 千恵さん
予算や広さの制限の中
最大限に工夫を凝らす
時代の傾向や流行というより、個別の課題を解決するリフォームが増えた印象です。予算・広さなど条件のある中で、引き戸を間仕切りに使って可変性を持たせたり、小さな壁を移動するだけで快適性をあげたり、非常に工夫を凝らしていらっしゃる作品が多くて、感心しました。
パナソニック ハウジング
ソリューションズ株式会社イノベーション本部
デザインセンター 所長
渡辺 雅純さん
リフォームした空間から
家族のドラマが見える
プランニングもインテリアとしての完成度も、年々、成熟されているという印象です。単純に設備が新しくなっただけでなく、その空間からご家族の笑い声や対話のシーンなど、ドラマが目に浮かぶような作品が多くありました。そんな場づくりのお手伝いができたことを嬉しく感じました。