デザインアワード
2020
審査員コメント
暮らし方の意識変化で
新しい住まいの在り方へ
全国から約300件にのぼる応募のあった今年度のデザインアワード。
コロナ禍において新たな住まい方や家族との距離感が見えてきました。審査員の皆さんに傾向やポイントなどを伺います。
コロナ禍では生活の
考え方が大きく進化
従来は広さを求めることが定番でしたが、コロナの影響で、家で過ごす時間が増え、家族の「ほどよい距離感」が見直された印象です。プランニングやコーナー設置などで個のスペースを設ける工夫に進化を感じました。また、旧家の不自由さをあえて残した作品にはこれからの住まいづくりの新しい可能性を感じました。
建築家 ㈱コンパス建築工房 代表取締役西濵 浩次さん
建築家 ㈱コンパス建築工房
代表取締役西濵 浩次さん
長く大切に、生活を楽しむ
という価値観をカタチに
築40年以上の住宅があり驚きました。スクラップアンドビルドの日本において「大切に住まう」という価値観が広がっているのですね。またご夫婦でカラオケを楽しむ家など、生活を楽しむことに前向きな、皆さんのリフォームへの姿勢が素敵だなと感じました。
「住まいの設計」編集長立石 史博さん
「住まいの設計」
編集長立石 史博さん
リフォームとは思えない
完成度の高さに驚き
回を重ねるたびにプラン力、デザイン力がアップしていると感じます。リフォームはどうしても既存の空間との違和感が出てしまいがちですが、それを感じさせない完成度の高い作品が多く、まさに実現力を目にすることができました。
インテリアデザイナー
interior design STRASSE 代表柳生 千恵さん
インテリアデザイナー
interior design STRASSE
代表柳生 千恵さん
これぞ、クリエイティブ!
適性を見直し丁寧に整える
リフォームは、暮らしの動線や収納の在り方などの適正とは何かを見直し、丁寧に整えていくという点で、実は新築住宅よりもクリエイティブなのだと思いました。またコロナ禍でも、気持ちが明るくなる住まい方をされている事例が多くエネルギーをいただきました。
パナソニック㈱
ハウジングシステム事業部 イノベーション本部
デザイン・コミュニケーションセンター 所長渡辺 雅純さん
パナソニック㈱
ハウジングシステム事業部
イノベーション本部
デザイン・コミュニケーション
センター
所長渡辺 雅純さん
建物への理解の深さから生まれた
実現力
今回もプランニング力・デザイン力の完成度が高い事例が多くありました。昔の建物はいろんな高さの梁が多いという傾向があります。最近のリフォームは天井を高くする傾向が強く、そのままでは低い梁が目立つプランになりがちですが、最初から意図的にデザインしスタイリッシュな空間を実現しています。あえて一番低い梁に合わせています。撤去できない壁や柱はリフォームにつきものですが、建物自体への理解が深ければ部分的な改装でも違和感もなく、新築と遜色ない空間を実現できます。
またインテリアの従来のセオリーとして「床は暗く、天井へいくほど明るい色調に」というものがあります。しかし今年の事例には、白いキッチンのカウンターや梁に黒を選ぶという斬新なコーディネイトなどが多くみられました。
家族と、ペットと、過ごし方に
大きな変化
設備では、自動水栓も当たり前になり玄関先の洗面室や、外で着た衣服を家に持ち込みたくないからと玄関収納も見られました。しかしコロナ禍のもっとも大きな変化は「家族の距離感」です。長時間一緒に過ごすことで家族といえども各々の居場所づくりが重要になりました。ペットと暮らす住まいにもユニークな変化がありました。家にいる時間が長くなるとペットの様子を見ている時間も増え、良くも悪くもペットの動向が気になります。それらの気づきが、キャットウォークをインテリア的視点で捉えたり、トイレを目立ちにくく工夫したりとプランに現れました。
テレワークが増え個室の必要性が高まりましたが、仕切りのないオープンな空間が好まれてきたため現代の住宅の個室といえば寝室か子ども部屋。今後はテレワーク用の空間が課題となるでしょう。中でもポイントは「音」です。オンライン会議中に家族の声が相手側に聞こえて困ると話題になりました。反対に家人にとっては長時間、仕事の会話が聞こえるのはストレスになります。音の課題は両面から考える必要があります。
新しい生活を見据えた
プランニング視点
昔は、洗濯物をたたんだり、来客時に宿泊できたりと、フレキシブルな空間としてリビングに小上がりをつくるケースが多くありました。日常生活の中に可変性のある空間があったのです。今回はコワークという視点で畳が丘を活用したユニークな事例や、お客様用の洗面を玄関につくるなど水廻りを再配置した事例もありました。「今は2階建てだけれど、将来1階で住むにはどうするか」などを考えることも、リフォームの醍醐味といえるでしょう。「住んでみないとわからない」という言葉がありますが、暮らしを体験済みのリフォームこそ、本当に暮らしやすい住まいへの近道になるのかもしれません。