ウォンバット探検隊 日本家屋の旅
 
 

第1話 竪穴式住居

   
2100年の宇宙を旅したウォン太とウォンちゃん。今度は、家族みんなで旅に出ることになりました。ロケットのコンピュータが、『昔の日本へワープ』と表示したかと思うと、もう、到着です。
「あら、あの大きな傘みたいなものはなぁに?」
ウォンちゃんの声に、グランマがびっくりしていいました。
「おやまぁ、知らなかったのかい。あれは竪穴式住居といって、今から1万年くらい前かねぇ、縄文・弥生・古墳時代の約8600年間ものあいだ、人はこんな家に住んでいたんだよ。地面を数10センチくらいの深さに丸く掘り、柱を立て、屋根は草や枝でできた、半分が地下になった家でね、夏は涼しく、冬は雪や風を防いで部屋を暖かくすることができる構造なんだよ。家の中は仕切りがなくて、ひと部屋だけの、今でいうワンルームだね」
「ガスコンロなんかないんだろなぁ。どうやって料理したの?」
ウォン太が中をのぞくと、グランマは丸く並べられた石を指さして、
「これが炉だよ。ここで枝や草を燃やしてコンロの代わりにしたんだよ。これは暖房や明かりにも使うし、煙は虫よけになったり、魚のくん製を作るのにも役立つんだよ。この頃、土器で食料を蓄えたり煮炊きするようにもなったんだね。炉で食料に火を通すことで、食べ物の種類も増えたし、栄養状態もずいぶん良くなったそうだよ」
「ねえ、もっと昔の家を探検しようよ!次はどんな家かな?」
ウォン太とウォンちゃんは、昔の家がとても面白くなってきました。

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第2話 高床式住居

   
ロケットで古代の日本へワープした、ウォンバット・ファミリー。
「あれ、田んぼが見えてきたよ!お米を作ってるんだね?」
青々と広がる田んぼを見つけて、ウォン太が得意そうにいうと、
ウォンちゃんが、びっくりした声を上げました。
「あのおうち、なが~い足がはえてるわ!」
グランパが窓をのぞくと、長い柱の上に乗った建物が見えました。
「ほほぅ、あれは『高床式住居』といってな、『豪族』とよばれる村のえらい人の住まいじゃよ。入り口には大きな日よけの傘や『露台』というバルコニーも付いた立派な家だね。高床の建物は稲作が盛んになった弥生時代に、米などを保存するための倉庫として作られたんだよ。日本は蒸し暑い国だから、食べ物にはすぐにカビが生えたり、腐ったり、虫がついたりするんだな。そこで風通しを良くして湿気や暑さを防ごうと、建物の床を地面から高く上げたんだ。とても涼しくて過ごしやすいから、家としても使うようになったんじゃな。」
「ねぇ、床と柱の間にある、あの小さい板はなに?」
ウォン太がたずねると、グランパは感心していいました。
「よく気がついたね。ありゃな、『ねずみ返し』といって、ネズミが家の中に入らないように考えた仕掛けなんじゃ。」
「へえ、いろんな工夫がされていたんだね」
ふたりは目をキラキラさせて、日本家屋探検の旅を続けるのでした。

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第3話 法隆寺

   
ウォンバット・ファミリーを乗せたロケットは、とてもにぎやかな町へワープしました。
ロケットはバリアーに包まれて、人々には見えません。やがて、ウォンちゃんが何かを指差してたずねました。
「あれはお城?それとも5階建てのマンションなの?」
「わっはっは! これは1400年前の飛鳥時代に建てられた法隆寺だよ。21世紀の今も残る、世界で最も古い木造の建物なんだよ」
ダッドは大笑い。
でもウォン太は不思議そうに首をひねっています。
「えっ、1400年?すごいなぁ。どうして腐ってしまわないの?」
ダッドはロケットのスクリーンにデータを呼び出しました。
「それはね、材料に腐りにくいヒノキを使って『やりがんな』という道具で削ったこと。これを使うと、木材の表面が密になって、雨がしみ込むのを防ぐんだ。それから鉄釘をひとつも使わなかったこと。釘がさびると、木材も腐ってしまうからね。だから柱を組み合わせるときは『ほぞ穴』を彫った柱に『ほぞ』をつけた柱を差し込むんだ。そして地面をしっかりつき固めてから、『礎石』という石を置き、その上に柱を建てたこと。地面の湿気を直接吸わないから腐りにくいんだよ」
「へぇ、釘を使わなくても、こんなに大きなものが建てられるんだ」
「まるでパズルみたいね!」
ふたりは、1400年前の人々の知恵に、とても感心していました。

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第4話 正倉院

   
「ねぇ、マーム。あの人たち、何を運んでいるの?」
次の見学地にワープしてきたウォン太は、荷物を運ぶおおぜいの人を見つけました。人々は倉のような建物に入っていきます。
「あの建物は今から約1200年以上前に建てられた『正倉院』という倉よ。中には東大寺や聖武天皇の宝物が収められているの」
「宝物って、おいしいキャンデーやケーキ?」と、ウォンちゃん。
「まぁ、くいしんぼうさんだこと。収められているのは立派な家具や文具、楽器が多いわね。日本だけでなくシルクロードという長い道を通って、世界中から運ばれてきた宝物なの」
「ふーん。でも、あんな木の倉で、宝物がカビたりしないのかな?」
「地上から2・7mも高い所に床があるでしょう。だから、風通しがいいし、湿気がこないの。それに、壁にも工夫があるのよ」
ウォン太は、建物に近づいて壁をじっくり観察しました。
「三角形の木を積み重ねて作っているんだ!」
「そう。ヒノキの三角柱を井桁に組んだ、校倉造っていう建て方よ。外側はとがっているけれど、内側は平らになるように組んであるの。それだけじゃなく、ヒノキは『ヒノキチオール』という物質を発散して、倉の中の空気をきれいにしてくれるのよ」
「昔の人って、よく、こんな建て方と、こんないい木を見つけたね」
「ヒノキって、きっと、神さまが贈ってくれた空気清浄器よ」
ウォン太とウォンちゃんは、正倉院の近くで深呼吸しました。二人はさわやかな気分になり、次の旅への元気がわいてくるのでした。

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第5話 寝殿造

   
ウォンバットファミリーは、広い庭園のあるお家にワープしました。お家の中には、美しい衣を重ね着したお姫様がいます。
「ここは平安貴族のお屋敷で、お父さんの居間を寝殿といってね、
それを中心に東西北にもお家を造り、渡り廊下でつないだ屋敷の形を寝殿造というんだよ。南には大きな池と庭があるよ」とグランマ。
「ふーん。でも、おうちの中って、畳があまりないのね」
「ふつうは板張りで、位の高い人が座る所だけ畳を敷いているのよ。
ウォンちゃん、雛祭りの飾りを思い出してごらん。あれはこの時代
の貴族の暮らしを再現したものなんだよ」というグランマの説明に、
ウォンちゃんは自分の家にあるお雛様を思い浮かべていました。
「あ、庭でサッカーをやっている!」
「蹴鞠だよ、ウォン太。家の中も寺院のお堂みたいに壁がないだろ。仕切りは御簾というすだれやカーテンのような几帳、屏風、障子だけ。冬は寒く、しとみ戸という雨戸はあるけど、暖房は火鉢だけだし…」
「だから、お姫様はたくさん着物を着ているの?」
十二単が気になるウォンちゃんを見て、グランマはにっこり。
「そうだよ。でもウォンちゃんには重すぎて、歩けないかもねぇ」
「もう、グランマのいじわる! あっ、お池に船が…」
船の上の貴族たちは、手に筆と短冊を持ち、思いついた和歌を書いているようです。千年も昔の貴族たちの優雅な暮らしを、ウォンちゃんたちは時間も忘れ、眺めていました。

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第6話 書院造

   
「ねぇ、ここは勉強部屋?窓のところに机がついてるわ!」
ロケットでワープしながら日本家屋の見学をしているウォンバットファミリーのウォンちゃんが、造り付けの机を指さしました。
今度はウォン太が不思議そうにたずねました。
「あれぇ?昔の部屋なのに、おじいちゃんの和室と似ているよ」
ふたりの発見に、グランパはうれしそうに応えました。
「そのとおりじゃ!この部屋の形を書院造といってな、もとは寺のお坊さんがお経を読み書きする机を窓に向けて作ったのを、室町時代に武士が取り入れたのじゃ。そして床の間や違い棚を付けて、畳を敷きつめ、襖や障子で部屋を仕切ったのだよ。柱はそれまで丸柱が多かったが、襖や障子がきっちり閉まるように角柱になったんだ。こうして書院造は今の和室の形に変化したんじゃよ。」
またウォンちゃんが棚を指さしながら、言いました。
「でも、2段になったその本棚って、あまり本が置けないよ」
「いやいや、違い棚も床の間も、りっぱな美術品を座敷に飾るための場所で、本棚ではないよ」
「おにいちゃんがミニカーを飾っている所は、違い棚だったのね」
「え?あ、あれは本棚だよ!そのうち本でいっぱいになるはず…」
照れるウォン太に、みんなも大笑い。書院の窓辺は、おだやかな日差しと楽しそうな
笑顔でいっぱいです。

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